CONSUMER SUPPORT

2013.01.08

火曜日限定コーナー「コンシューマー・サポート」では、
「消費者問題」をキーワードに、
消費者問題の専門家や有識者をゲストにお迎えして、
被害の実態・問題点・救済方法をわかりやすくお届けしていきます。
第5回目のテーマは「欠陥住宅被害」です。

  
スタジオには、弁護士の上田 敦さんを お迎えししました。
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Q.今日のテーマ「欠陥住宅被害」とは、どういった被害ケースがあるんでしょうか?

A.意図的な手抜き工事や、明らかに不適切な施工によって
住宅に不具合が生じているケース全般を「欠陥住宅被害」と呼んでいます。
少しでも利益を上げようと意図的に手抜き工事をするような場合は論外として、
工事施工者として求められる技術や経験が乏しいために不適切な施工が行われ、
その結果、住宅が本来備えていなければならない性能を欠いてしまったケースも
欠陥住宅被害と言ってよいでしょう。
欠陥住宅被害を考えるときには、欠陥「現象」と欠陥「原因」を分けて考えることが大切です。
雨漏れを例に考えてみましょう。雨漏れの原因は実は様々です。
単に防水処理がまずくて漏水するケースもあれば、施工のまずさから建物全体が歪み、
そのために漏水しているといったケースもあります。
建物全体が歪んでいるのに、コーキング処理ばかりしてみても解決にはなりません。
つまり、欠陥の「原因」が分からないと、
そもそも欠陥「現象」が施工業者の施工のまずさによるものなのか分かりません。
欠陥の「原因」がわかって初めて適切な補修方法が選別できます「現象」だけにとらわれず、
その「原因」を突き止めることが、
適切な欠陥住宅被害救済を図る上でまず必要になります。

Q.どのような方々が被害者にあわれているのでしょうか?

上:新築を建てたり、建て売り住宅や中古住宅、マンションを買うなど、
住宅を入手される方全てが被害者となる可能性があります。
住宅は一生の中でおそらく一番大きな買い物であり、生活の基盤になる場所であるだけでなく、
雨露をしのぎ生活や家族の安全を確保するために不可欠なものでもあります。
仮に、構造的に問題があって地震が来たらとても持たないとすれば、そんな家は誰も買いません。
それだけに住宅を取得するには慎重さが求められるのですが、
実際には、立地や価格、建物の外観、室内のデザイン、間取り、
部屋の広さといった表面的なところばかりに目が行きがちです。
また、営業トークで惑わせ、その住宅の持っている問題点を隠そうとする悪質な業者もいます。
まずは信頼できる業者を選ぶことが重要であり、
気に入った住宅が見つかれば、その外見だけではなく、
家としての基本的な性能をきちんと備えているか、確認する慎重さが必要でしょう。

Q.被害金額は、どの程度なのでしょうか?

A.被害としては、簡単な補修費用程度のものから、
建物の全面的建て替えや、代金の返金を求める場合まで様々です。
金額で言うと、数十万円のものから何千万円というものまであります。
雨漏れの例で言うと、その原因が単に防水処理のまずさだけであれば、
防水処理をやり直す程度の補修で済みます。
ところが、建物基礎の施工に問題があり、家全体が歪んでいるようなケースでは、
一旦取り壊して基礎からやり直し、再度建て替えることが必要となる場合もあります。
同じ雨漏れであっても、その原因によって被害額は大きく変わることになります。

Q.先ほど、悪質な手抜き工事の他にも「施工業者による技術や知識不足」が挙がっていました。
ということは、施工業者も認識できていない欠陥被害のケースもあるということですね。

A.意図的な手抜き工事だけではなく、
施工業者として求められる基本的な技術や知識が欠如していて不適切な施工がなされるケース、
リフォーム案件であれば、施工業者に基本的な技術や知識が不足していて
構造耐力上必要な壁までを取っ払ってしまったといったような破壊的な工事がなされた
という事例もあります。
上:具体的には、先ほど例に挙げた雨漏れのケース、
木造建物では構造耐力上必要な壁の量というのが決まっているのですが、
それが足りていないために地震に耐えられない建物になってしまっているケース、
地盤に見合った基礎が施工されていないために沈下を起こしてしまい建物が歪んでしまったケース、
鉄筋コンクリート建物で必要とされる鉄筋量を満たしていないケース、
基礎と土台、柱が法律の求める方法で繋がっていないケース、などがあります。

Q.なるほど。ただ、私たち消費者は素人なので、
欠陥の現象が起きて、はじめて「工事に問題があったんじゃないか?」と気付きますよね。
それに、施工業者に非を認めさせることは難しそうです。
こういった「欠陥住宅被害」に対して、被害救済例はあるのでしょうか?
例えば、消費者にとって有利な裁判例などはありますか?

A.はい。やはり相談者はまず不具合現象を訴えて我々のところに相談に来られます。
ご依頼を受けると、建築士など建築専門家の協力を得て、欠陥現象の原因を探ります。
施工業者の不適切な施工に問題があることが分かれば、その点を指摘して業者と交渉します。
交渉が決裂すれば、調停や裁判で解決を図ります。
欠陥住宅被害の救済については、各地に被害救済団体があります。
それらの団体で「欠陥住宅被害全国連絡協議会」(略称「欠陥住宅全国ネット」)を組織し、
被害救済のための情報交換や勉強会、
全国一斉110番を実施し被害の掘り起こしなどを定期的に行っています。
欠陥住宅全国ネットのメンバーが獲得した裁判例や解決事例はたくさんあります。
こういった裁判例を集めて、欠陥住宅判例集を定期的に出版しており、
現在6巻まで発刊しています。一般の書店でも販売されています。

Q.でも住宅購入は一生に一度の大きな買い物です。
できることなら、欠陥のない住宅に住みたいものです。
消費者としてはどのようなことに気をつければ良いでしょうか?

A.住宅を入手する際には、信頼できる業者を選んでください。
「早く契約しないと買い手が付くから急げ。」などといって、
契約を煽ったりする業者は基本的に信用してはいけません。
高価な買い物を煽って契約させるなど論外です。
大手だから、CMをやっているから、という理由だけで選ぶのも考えものです。
複数の業者の話を聞き、一定期間をかけてじっくり選ぶことも重要です。
いくつもの業者の話を聞いていると、だんだん目が肥えてくるものです。
決して焦って契約してはいけません。
専門家のセカンドオピニオンを求めるのもいいでしょう。
中古物件を購入する場合には第三者的立場の建築士に調査してもらう、
家を建てる場合には設計段階で別の建築士にも見てもらうなどです。
いざ契約をするときにも、契約書の内容をよく検討する必要があります。
業者によっては後に問題が生じても一切責任を負わない旨の条項を潜ませているケースもあります。
一定の瑕疵については法律で責任が定められているのですが、
それでも契約書に書いてあるとなると、業者はそれを盾に交渉でごね、
解決に時間がかかるケースが考えられます。
最近は契約条項をしっかり説明する業者も増えているようですが、
やはり建築に関する専門的な内容を伴うため、問題点が気づかないケースもあります。
注意して下さい。
新築の場合には工事過程をできるだけ写真に撮っておくのもいいでしょう。
万が一問題が生じたときに重要な証拠になるかもしれません。

Q.これから住宅購入を考えている方は、「信頼できる業者を選ぶ」ことが大切ということですね!
では、すでに住宅を購入している方で、「ひょっとして被害にあっているのではないか?」と
感じた方はどうすれば良いでしょうか?

A.京都には欠陥住宅京都ネットという被害救済団体があります。
先ほど述べた欠陥住宅全国ネットに加入しています。私の事務所が事務局です。

お問い合わせ先は、075-221-2755 上田・小川法律事務所です。
ホームページも開設していますので、そちらもご覧下さい。

このコーナーは,
京都府から京都消費者力向上委員会が委託を受けてお届けしています。

京都消費者力向上委員会は,
・京都府生活協同組合連合会、
・京都生活協同組合、
・コンシューマーズ京都(京都消団連)、
・適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
以上の団体で構成された「消費者の消費者力が向上する活動を行う」委員会です。

消費者被害にあった場合には,
京都府消費生活安全センターへご相談下さい。

また,適格消費者団体京都消費者契約ネットワークでも
差し止め請求のための情報提供を受け付けています。
詳しくは,各ホームページをご覧ください。

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