Consumer Support
火曜日限定コーナー「コンシューマー・サポート」では、
「消費者問題」をキーワードに、専門家や有識者をゲストにお迎えして、
被害の実態・問題点・救済方法をわかりやすくお届けしていきます。
第11回目のテーマは「結婚式場のキャンセル料は高額」です。
スタジオには、適格消費者団体京都消費者契約ネットワークの事務局員で
弁護士でもある「増田朋記」さんをお迎えしました。
Q.今日のテーマ「結婚式場のキャンセル料問題」とは、どんな問題ですか。
A.結婚式場・披露宴サービスの利用契約に関しては消費者の相談事例が多いんです。
なかでも、「結婚式場の予約をして申込金を支払った後、
キャンセルを申し出たが申込金を返してもらえない」、
「結婚式場を挙式予定日前にキャンセルしたが、解約料に納得できない」など
申込金の返金やキャンセル料に関するトラブルが非常に多くなっているのです。
Q.その結婚式場のキャンセル料というのは、どのようにして決まっているのでしょうか。
A.結婚式場や披露宴サービスの利用契約では、事業者ごとに約款が作られています。
その約款の中にキャンセル料条項が定められており、内容は様々なものですが、
多くの場合は解約時期に応じてキャンセル料が定められています。
また、結婚式場や披露宴サービスの事業者団体である日本ブライダル事業振興協会が
「結婚式場・披露宴会場におけるモデル約款」というものを作成して公表しており、
このようなモデル約款を参考にして約款を作成している事業者も多いようです。
Q.約款を使って事業者サイドが決めているということなんですね。
では、結婚式場・披露宴サービスのキャンセル料については、どうしてトラブルが多いのでしょうか。
A.結婚式・披露宴会場の利用に関する契約は、
実際に予定された実施日よりも相当前に申込みがされることが多く、
その内容も当初はあまり明確でないものが、次第に具体的になっていくという特色があります。
そのため、内容が具体化するにつれて、勧誘時の説明、
パンフレットやブライダルフェアの内容とは大きく異なる内容となったため
解約したいという消費者もたくさん出てくるわけです。
ところが、いざ解約しようとすると、
約款に定められたキャンセル料を支払わなければならないことになり、
消費者としては、なぜ、実際に結婚式・披露宴を行ったわけでもないのに
そんなに高額なキャンセル料を支払わなければならないのかということで強い不満が残ることになるのです。
Q.この問題は法律的にはどのような問題となるのですか。
A.消費者契約法という法律があります。
この法律では、契約の解約時に事業者は
消費者から「平均的な損害」を越える解約料をとってはいけないことになっています。
ですから、キャンセル料が「平均的な損害」を超える不当に高額なものではないかどうかが問題となります。
Q.実際に、結婚式場のキャンセル料は法律的に不当なものと考えられるのでしょうか。
A.現在、この問題に関しては、適格消費者団体京都消費者契約ネットワークが、
2つの事業者に対して、キャンセル料を定めた条項の使用を差し止める裁判を行っています。
そのうちの1つの事業者は、
先ほどの日本ブライダル事業振興協会のモデル約款に準じてキャンセル料条項を使用しており、
業界のモデル約款についてもその正当性が争われることとなっています。
今回問題となっている消費者契約法の「平均的な損害」というものが
どういう内容を示すものかについては裁判例も様々であり、
証明するために必要な資料もほとんどが事業者側にあるため、
キャンセル料の不当性を示すことは簡単なことではありません、
ただ、消費者が、実際の実施内容も不明確なままの契約に
相当長期間拘束されることとなってしまうことは避けられるべきですし、
少なくとも具体的な内容も定まっていないような時期について
高額なキャンセル料を定め、実質的に解約を制限することは不当であろうと考えられます。
Q.参考となる裁判例などはあるんですか。
A.挙式予定日から1年以上前に結婚式場の予約をして、その数日後に予約を取り消した場合に、
予約金10万円の返還を認めないとする条項について、
予定日の1年以上前には平均的な損害として具体的な金額を見積もることはできないとして、
消費者契約法により無効とした東京地裁の裁判例があります。
Q.結婚は人生最大のお祝い事のひとつです。
だからこそ、なるべくトラブルのない形で式を迎えたいものですよね。
われわれ消費者としては、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。
A.キャンセル料条項の不当性そのものとは別の話になるのですが、
トラブルの背景として、契約の申込時点の勧誘態様の問題があります。
事業者の中には、ブライダルフェアなどの際に、
結婚式・披露宴の実施に不可欠な事項を明らかにしないまま勧誘し、
「仮押さえ」や「とりあえずの申込み」などといって
申込金を支払わせるようなところも少なくありません。
約款に定められた契約条項の問題は、その内容が不当なものであれば、
実際に契約する際にどれだけ消費者に説明したとしても、
正当なものに変わるわけではありませんが、
消費者の立場としては、
事業者から契約内容を理解できるまで十分な説明を受けるようすることが大切です。
また、事業者にせかされても安易に申込金を支払わないように注意する必要があります。
人生の門出の話ですから出来る限りトラブルは避けたいですが、
本質的な問題解決には、やはり業界自身の改善が必要ですね。
Q.では実際にトラブルが生じた場合にはどうすればいいでしょうか。
A.個別の相談を希望される場合には、京都府の消費生活安全センターにご相談下さい。
このコーナーは,
京都消費者力向上委員会が京都府から委託を受けてお届けしています。
京都消費者力向上委員会は,
・京都府生活協同組合連合会、
・京都生活協同組合、
・コンシューマーズ京都(京都消団連)、
・適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
以上の団体で構成された「消費者の消費者力が向上する活動を行う」委員会です。
消費者被害にあった場合には,京都府消費生活安全センターへご相談下さい。
また,適格消費者団体京都消費者契約ネットワークでも
差し止め請求のための情報提供を受け付けています。
詳しくは,各ホームページをご覧ください。