CONSUMER SUPPORT

2012.12.11

今月からスタートしたこのコーナー「CONSUMER SUPPORT」では、
「消費者問題」をキーワードに、
消費者問題の専門家や有識者をゲストにお迎えして、
被害の実態・問題点・救済方法をわかりやすくお届けしていきます。
第2回目のテーマは「ケータイの解約料は正当ですか?」です。

  
スタジオには、適格消費者団体京都消費者契約ネットワーク理事であり、
弁護士でもある「長野浩三」さんをお迎えしました。
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Q.長野さんの団体は「適格消費者団体」ということですが,
この「適格消費者団体」ってどういう消費者団体なのですか?

A.適格消費者団体は,内閣総理大臣から認定を受けた特別な消費者団体です。
事業者が不当な行為を行っている場合に、消費者の利益のために,
事業者に対し,不当な行為を行うことをやめなさいという判決を求めて,
訴訟を行うことができる権限を与えられた消費者団体です。
現在,京都消費者契約ネットワークを入れて,全国で11の適格消費者団体があります。

Q.今日のテーマ「ケータイの解約料」は、どんな問題なんですか?

A.今はほとんどの人が携帯電話を持っていると思います。
最近の携帯電話の契約では2年間継続して利用するこことを条件としている契約がほとんどで,
その間に解約すると9975円の解約料を取られることになっている例があります。
数年前から携帯電話番号を変えずに他の携帯電話会社へ契約を変更することができる、
ナンバーポータビリティという制度ができました。
この制度ができたことで,
消費者は自由に自分がいいと思う携帯電話会社を選んで契約できるようになったのですが,
解約料があることで解約をためらったり,他社へ変更することをためらうなど,
消費者の携帯電話を選択する自由の妨げとなっています。  

Q.消費者の方々はこの解約料についてどんな思いをもっているのでしょう?

A.京都消費者契約ネットワークで電話による110番を行ったことがあります。
その際には電話がなりっぱなしの状態でした。
非常にたくさんの人がこの解約料に不満をもっていることがわかりました。
また,海外に行くために解約せざるをえないのに解約料をとられた、
失語症になったために解約しようとする際にも解約料がかかった,
などの苦情も当ネットワークに寄せられています。

Q.この問題は法律的にはどのような問題ですか?

A.消費者契約法という法律があります。
この法律では,契約の解約時に事業者は消費者から
「平均的な損害」を越える解約料をとってはいけないことになっています。
この解約料が「平均的な損害」にあたるかどうかが問題となっています。

  
Q.これまでにどのような被害救済がなされていますか?
消費者にとって有利な裁判例などはあるんでしょうか?

A.これまでに京都地方裁判所でこの解約料に関する判決が3件でています。
まず1件目は, これらの契約では基本料金が半額とされている例があります。
解約時までの割引額の合計が事業者の損害だとして,
全契約者の平均割引額と平均的な解約期間をかけて
およそ3万円が事業者の平均的損害だとして,
9975円の解約料は平均的な損害を越えないとした例があります。

また,2件目は,1件目と異なり,解約時までの割引額は事業者の損害ではないとしました。
この判決は,解約しなかったら得られた解約時期以後の事業者の利益が損害だとして,
1か月あたりおよそ4000円の利益が損害で,
最後の2か月で解約した人の事業者の利益は8000円,
最後の1か月で解約した人の事業者の利益は4000円だとして,
これらの人については9975円の解約料は平均的損害を越えるものだとして,
消費者に返金を命じました。
また、事業者にこの解約金条項を使うなという命令もしました。

3件目は,2件目と同じように解約後の事業者の利益を事業者の損害としたのですが,
解約しようと思っている消費者は,通信や通話を控えるだろうから,
通信費や通話料を除く基本料金部分だけを基礎として利益を算定し,
平均的な解約期間をもとにすると事業者の利益が1万円強になるとして,
9975円はこれを下回らないから解約料は不当でないとしました。
これらについては控訴して,大阪高裁で争われています。

 
Q.いろいろな内容の判断がされているんですね。
消費者としてはどのようなことに気をつけたらいいですか。

A.これから契約しようとする消費者の人は,解約時のことは基本的に意識しませんし,
ほとんどの契約がこの2年縛りの契約となっています。
ですから,消費者としては気をつけて避けられるという問題ではありません。
基本的には,私たちが行っている訴訟で,
解約料を定める条項が消費者契約法で無効と判断されるほかには
消費者からの視点での解決はないと思います。

 
Q.さきほどの判決はどのようにしたら見られますか。

A.京都消費者契約ネットワークのホームページで判決文を掲載しています。
京都消費者契約ネットワークで検索していただければすぐに見つかると思います。

Q.消費者の方が相談や情報提供したい場合はどうすればいいですか?

A.京都府の消費生活安全センターで相談し,助言を受けることができます。
また,京都消費者契約ネットワークでは、
この問題についての情報提供を消費者の方にお願いしています。
京都消費者契約ネットワークのホームページに
情報提供のメールアドレスを記載していますのでそちらから情報提供をお願いします。
非常にたくさんの消費者の方が不満に思っておられるこの解約料について
なくなるように活動していきますので,
この問題に注目して,ご支援していただければと思います。

今日は、弁護士の長野浩三さんをお迎えして、ケータイの解約料のお話を伺いました。

「コンシューマー・サポート」。
このコーナーは,京都府から京都消費者力向上委員会が委託を受けてお届けしています。

京都消費者力向上委員会は,
・京都府生活協同組合連合会、
・京都生活協同組合、
・コンシューマーズ京都(京都消団連)、
・適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
以上の団体で構成された「消費者の消費者力が向上する活動を行う」委員会です。

消費者被害にあった場合には,
京都府消費生活安全センターへご相談下さい。

また,適格消費者団体京都消費者契約ネットワークでも
差し止め請求のための情報提供を受け付けています。
詳しくは,各ホームページをご覧ください。
消費生活相談は京都府の消費生活安全センターで無料で受け付けています

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